できると思うからできる

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できると思うからできる(Possunt quia posse videntur.) 

いろいろな場面で心の支えになりそうな言葉です。

元はウェルギリウスの叙事詩『アエネーイス』にみられる表現です。船による競技が最大の盛り上がりを見せる場面で、勝利を確信して全力を尽くすトロイアの漕ぎ手たち。彼らの胸の内を表すのがこの言葉。自信にみなぎる漕ぎ手たちの心に火をつけたのが船長の次の台詞でした。

「今だ、今こそ力を込めて櫂をこげ、ヘクトルの仲間たちよ。トロイアの最期の時に、わたしが仲間に選んだ者たちよ。今こそあの力を搾り出せ。今こそあの根性だ」。

この競技は主人公アエネーアスの亡き父を追悼するために開かれたものです。競技に参加する面々はいずれも祖国防衛の戦いに敗れ、国を失った落ち武者たちばかり。トロイア崩壊の最後まで力の限りを尽くして戦った仲間たちに、もう一度決死の覚悟で力を振り絞れ、と船長は発破をかけるのです。

この背景を念頭に置けば、表題の言葉をただ念仏のように唱えれば事が成就するわけではない、ということがよく理解できるでしょう。「できると思える」前提として、どれほど大きな苦しみを味わい、それを乗り越えたかが問われるのです。

P.S.
教育との関連で「山の学校」にエッセイを書きました。
>>「力があると思うゆえに力が出る」

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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