ラテン語の第1変化名詞

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rosa,-ae f.
目次

第1変化名詞の学び方

rosaの変化:これだけを覚える

ラテン語学習の一番大事な一歩は名詞の変化(曲用)(declinatio / declension)を暗記することです。コツは代表例を一つに絞ってそれを完璧に覚えることです。

rosa(バラ)を例にとって覚えるのがよいでしょう。

では一緒に発音しましょう。この名詞はロサと発音します。

「ロサ、ロサエ・ロサエ・ロサム・ロサー」

理屈抜きに何度も繰り返します。発音の仕方はカタカナ読みでOKです。

覚えたら、綴りにも注目します。

rosa, rosae, rosae, rosam, rosā 

口で発音しながら、rosa,rosae,rosae,rosam,rosāと紙に書きます。

最後のrosā の綴りが気になりますね。語尾のaはāとかきます。aは「ア」でāは「アー」と伸ばします。

rosaの変化:それぞれの形の意味を考える

それぞれの形の意味をお伝えします。

rosa ロサ:バラ
rosae ロサエ:バラ
rosae ロサエ:バラ
rosam ロサム:バラ
rosā ロサ―:バラによって

まずは理屈抜きに、「ロサ・ロサエ・ロサエ・ロサム・ロサー」と唱えることから始めてください。覚えられたら次の表を見ます。

単数複数
主・呼格rosarosae
属格rosaerosārum
与格rosaerosīs
対格rosamrosās
奪格rosārosīs
rosaの変化表

バラが1本の場合「単数」、バラが2本以上ある場合「複数」の扱いになります。太字の部分を「語尾」と言います。一部同じものもありますが、それぞれ少しずつ違いがあるのに気づきます。そこに気を付けて、単数の縦一列を声に出して言えるようになったら、同じ要領で複数も上から下の順に声に出して言えるようにします。

主格、呼格、属格、与格、対格、奪格のそれぞれの呼び方と意味については「ラテン語の格変化」で詳しく説明しています。

複数はこうです。

「ロサエ・ロサールム・ロシース・ロサース・ロシース」

2つ目の「ロサールム」だけ太字をつけたのは、アクセントの位置が他と異なるからです。そのほかは全部語頭の「ロ」にアクセントがあります。そんなことにも気を付けて、ともかく単数の縦一列、つづいて複数の縦一列をスラスラよどみなく言えるようにしてください。

それができるようになったら、それぞれのポジションの意味について丁寧に見ていきます。

英語は語順がきっちり決まっているのに対し、ラテン語はこの「語尾」が変化することで、「てにをは」の区別を表します。

主格: Rosa est.(バラがある)。
属格: Odor rosae est.(バラの香りがある)。
与格: Rosae aquam dō.(私はバラに水を与える)。
対格: Rosam amō.(私はバラを愛する)。
奪格: Rosā mensam ornō.(私はバラでテーブルを飾る)。

※ 違いを強調するために語尾を太字にしているだけで、実際の文章の中で太字になっているわけではありません。

語尾に注目すること

語尾だけ抜き出すと次のようになります。

単数複数
主・呼格aae
属格aeārum
与格aeīs
対格amās
奪格āīs

この語尾だけを見ても、rosaの変化は言えるでしょう。やってみてください。もちろん、見ないでできる人にはたやすいはずです。ただ、この表があれば、第1変化名詞のrosa以外の単語についても応用がききます。たとえば、stella(ステッラ:星)も第1変化名詞なのですが、どのように唱えればよいか、わかりますか?

語尾の表を見れば自分でできるのではないでしょうか?

答えは次の表のようになります。

単数複数
主・呼格stellastellae
属格stellaestellārum
与格stellaestellīs
対格stellamstellās
奪格stellāstellīs

単数から順に読むと、「スッラ・スッラエ、スッラエ、スッラム、スッラー」、複数は「スッラエ・ステッラールム・スッリース・スッラース・スッリース」と読みます。 単数奪格で、語尾のaを長く読む点に注意してください。

単数主格 stellaは、「星は」と訳せます。 呼格 stellaは「星よ」です。 与格 stellaeは、「星に」とか「星にとって」という意味です。 対格 stellamは「星を」になります。 奪格(だっかく)は一言で説明できない格です。 「星から」や「星によって」と訳すことができます。inやexといった前置詞とセットで登場することが多いです。

覚える順番について(FAQ)

上の表は、教科書同様、主格、属格、与格、対格、奪格の順でお示ししています。教科書によっては、主格の次に対格を紹介するものもあり、「どちらがよいですか?」というご質問をいただくことがあります。私の答えは、どちらでもよい、というものです。こういうと無責任のように聞こえますが、重要なことは「その順番通りに覚えている」ということではなく、一つの名詞について、数と格に応じた語尾の違いを瞬時にこたえられる力です。例をあげると、rosa(バラ)の (1) 複数・与格は? (2) 単数・対格は? (3) 複数・属格は?といった問いに正解できる力を養うことです。この力は、どちらの順番で覚えても養われます。

第1変化名詞の特徴

第1変化名詞の大部分は女性名詞である点も覚えておきましょう。

ギリシア神話の「ケパロスとプロクリスのエピソード」では、 妻の誤解(夫に愛人がいるという勘違い)は、そよ風(aura)に語りかけた夫の言葉に原因がありました。「そよ風(=aura アウラ)よ」という言葉は、愛する女性に対する語り掛けであると錯覚されたからです。(つまり、aura は女性名詞)。

第1変化名詞は、辞書の見出しでは、-aで終わる名詞と覚えてください。 例えば、fāma (ファーマ) うわさ、dea (デア)女神、glōria (グローリア)栄光、terra (テッラ)大地、via (ウィア)道、などは全部第1変化名詞です。

繰り返しになりますが、第1変化名詞の場合、辞書の見出しは、ふつう fama, ae, f. となっています。 単数・主格の次に、単数・属格の形 (-ae)をかくことにより、 この単語の変化形が第1変化名詞だとわかります。 ちなみに、最後のf. は女性名詞 (feminine)であることを示します。

第1変化名詞の例

第1変化の場合はその大半が女性名詞です。 dea(デア)「女神」、 fīlia(フィーリア)「娘」、puella(プエッラ)「少女」、 rēgīna(レーギーナ)「女王」など。

第1変化名詞で男性のものは、agricola(アグリコラ)「農夫」、nauta(ナウタ)「水夫」、poēta(ポエータ)「詩人」、collēga(コッレーガ)「同僚」、scrība(スクリーバ)「書記」など少数です。あと男性の人名で-aで終わるものがあります。有名なところでは、Seneca(セネカ)などがあります。

例外的なこと

dea(女神)とfīlia(娘)の複数・与格と複数・奪格は、それぞれdeābusと fīliābusになります。本来の規則的な形 deīsとfīliīsにすると、(後で学ぶ)第2変化名詞deus(神)とfīlius(息子)の同変化形(複数・与格と複数・奪格)とまったく同じになるため、混乱しないよう第3変化名詞の語尾を借りているわけです。

第1変化名詞の基本的な使われ方

実際の文の中で名詞はどのように使われるのでしょうか。第1変化名詞を例にとって説明します。 なお、例文に使っている動詞の活用については、「動詞」を参照してください。 ちなみに例にとりあげた「輝く」を意味する micō(ミコー)は第1変化動詞、「見る」という意味の videō (ウィデオー)は第2変化動詞です。

Stella micat.1つの星輝く。
Stellam videō.私は1つの星見る。
Stellae micant.複数の星輝いている。
Stellās videō.私は(複数の)星見ている。

第1変化名詞の例文

第1変化名詞を含むラテン語は無数にあります。リンク先に詳しい文法的説明があります。

Aquila nōn captat muscam. 鷲(わし)は蠅をつかまえない。

Fāma volat. 噂は飛ぶ。

Justitia saepe causa glōriae est. 正義はしばしば栄光の原因である。

Scientia est potentia. 知識は力である。

Vīta brevis, ars longa. 人生は短く、技は長い。

ラテン語の教科書

上で書いた内容は『しっかり学ぶ初級ラテン語』の内容に基づいています。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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