ナンバーワンとオンリーワン

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ナンバーワンとオンリーワン

私の「ラテン語のページ」にはまって一時間もさまよったとおっしゃる方からメールをいただきました。

「ラテン語で、「1番」とか「ナンバーワン」とか「トップ」といったような意味の単語はあるのですか?」とのご質問です。

まず英語のfirstに相当するラテン語はprimus(プリームス)です。日本語表記はプリムスでもよいと思います。このラテン語は、たとえばprime minister(首相)というときのprimeの語源です。

primeと同様にラテン語のprimusからできた英単語としては、primal(第一の)、primary(最初の)などがあります。一方ministerの語源は、「より小さい」という意味をもつラテン語のminor(ミノル)です。その反意語はmajor(マイヨル)で、英語風の発音ですと、メイジャーとかマイナーとかいいますね。したがって英語のministerという語は、元来はへりくだった意味、たとえば「召使」というニュアンスを含んでいたと考えられます。 また、歌劇で主役を務める女性歌手のことをプリマドンナといいますが(prima donnaとつづります)、primaのつづりそのものは、今あげたprimusの女性形でdonnaを修飾しています。ではdonna(ドンナ)とは「どんな」意味でしょう(笑)。これはladyという意味をもつイタリア語ですが、この言葉も元はラテン語です。つまりdomina(ドミナ)という「女主人」を意味するラテン語からできた言葉です。

従って「プリマ・ドンナ」とは英語で言えばfirst ladyという意味になるでしょう。一方、この言葉との関連で想起される「マドンナ」というイタリア語は、「私の」を意味するma(マ)とdonnaが合わさってできた語で、my ladyであると理解できます。

なお男の主人はdominus(ドミヌス)といいます。英語のdominate(支配する)やdominion(支配力)といった単語はこのラテン語のdominusと関連した言葉です。

このように、ラテン語のprimus(プリームス)が「ナンバー・ワン」を意味する一方、unicus(ウーニクス)は「オンリー・ワン」を意味します。英語のunique(ユニーク)の語源といえばおわかりいただけるでしょう。なおこのunicusというラテン語自体、unus(ウーヌス)という「一」を意味するラテン語からつくられた言葉です。このunusと関連した英単語をあげると、unite(統一する)、unity(単一)、universal(普遍的な)、university(大学)などがあげられます。

次に「トップ」に対応するラテン語ですが、summus(スッムス)という言葉があります。「上方の」という意味を持つ形容詞superus(スペルス)の最上級の形で、「最も高い」という意味をもちます。

このsummusと関連した英単語としては、sum(合計)、summary(要約)、summit(頂上)などがあります。なお、ラテン語のsuperusの比較級の形はsuperior(スペリオル)ですが、この単語はそのまま英単語に見出せますね。ちなみにsuperusの反意語はinferus(イーンフェルス)で イタリア語で地獄を意味するinferno(インフェルノ)の語源となっています。またその比較級の形inferior(イーンフェリオル)は、これまたそのままのつづりで英単語に入っています。

ただし最上級のinfimus(インフィムス)とその別形imus(イームス)からできたと思われる英単語は残念ながら見つかりません。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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